HOME > ■肥料不使用の自然栽培米水田の土は痩せているのか?■
私は、自然栽培米に関し、多くの質問を受けますが
次の質問は、よく受ける質問の一つです。
「肥料を使用しないと土が痩せてきませんか?」
「肥料を使用しないと作物はできない」
この考え方は、当たり前になっているかもしれません。
戦後の食糧増産の流れで
農薬・肥料の使用が当然の世界となったので
仕方ないことだと思います。
しかし、現在
多くの方が疑問を抱きだしているようです。
「農薬・肥料を使用した食べ物は、本当に安全な食といえるのだろうか?」
農作物を作るにあたって
農薬・肥料を使用しないと本当に作物はできないのか?
今回は、肥料にフォーカスを当て
「肥料を使用しないと土が痩せてしまうのか?」を一緒に考えたいと思います。
【目次】
土は作物生産の土台であり
土が痩せてしまうと収量が減少してしまうため
土作りは、全ての農法にとって重要課題です。
「肥料を使用しないと土が痩せてしまうのか?」を考える際に
大事なのは、自然の摂理を知る事です!
大原則として
「自然界は物質的にどんどんと豊かになっていきます」
火山が噴火し、火砕流が流れ
裸地化しても10年もすれば樹木が生息してきます。
裸地化しても生物量が増え、物質量が増え
ある一定量の生物量・物質量までいくとMAXとなり均衡を保ちます。
自然界においては
作物の育たない岩石であっても
生物の力を借りて、土壌がどんどん豊かになる仕組みになっています。
ここで大事なポイントは
生物の働きです。
本来の土壌を見るうえで一番大事なポイントは
肥料分や栄養分でなく、【土壌微生物】です。
自然栽培米作りは、
農薬と肥料を使用しないことを前提としています。
自然栽培の世界では、
農薬と肥料は相互に関係しあっていると考えています。
農薬と肥料、先にどちらを止めると良いかというと
自然栽培米農家は「肥料の方を先に止める」と言います。
肥料と聞くと
作物に栄養素を与える良い物というイメージを持っているかもしれません。
しかし、肥料の種類によっては
例えば、動物糞尿の割合が多い厩肥等によっては
窒素分が多く、土壌を汚し、虫が寄ってくる原因となります。
肥料の種類によっては、下記の悪循環を生みます。
肥料を使用する → 虫がくる → 農薬を使用する
虫がきて収量が減ると困るので、さらに多く収量を上げるために
肥料を使用する → 虫がくる → 農薬を使用する
しかし、それでも
「やはり肥料が無いと土壌は痩せていくでしょう」と疑問をお持ちの方に
下の写真を見て頂きたいと思います。
写真:左側:冨田自然栽培米の田んぼ と 右側: 慣行栽培米の田んぼ
熊本県七城町で農薬・肥料を一切使用しない
自然栽培歴5年以上の冨田親由さんの春先の田んぼです。
左側の冨田さんの自然栽培米の田んぼの
春草の成育の強さがお分かりになりますでしょうか?
私達が注目しているのは
地上部ではなく、目に見えない地下部です。
自然栽培の方が
良い土壌条件を創り上げているのだと思います。
春草がそれを教えてくれています。
冨田さんは、それぞれの田んぼを回り
土壌のにおいを嗅いで
土壌微生物が豊かである事を確認しています。
「肥料が無いと土壌が痩せる」というのは、実は違います。
正しくは、
「土壌微生物がいないと土が痩せる」です。
冨田さんの自然栽培の田んぼを見れば
自然栽培で土が痩せて不毛な土になるとは言えないことが分かりました。
しかし、それでも疑問に思うかもしれません。
「人間が食べるお米が収穫されるから
土壌から養分が無くなって養分不足になるのではないか?」と
そこで自然栽培の水田において
供給される有機物を見てみましょう!
自然栽培米水田で供給される有機物は主に次の4種類です。
1. 収穫時の粉砕された稲わら
2.稲の地下部の残根
3.春先に田んぼに生える春草
4.土壌微生物の死骸
これらは、田んぼの外から人為的に持ち込む肥料とは異なり
水田内で循環する有機物です。
1. 収穫時の粉砕された稲わら
収穫時の粉砕された稲わらは、最も分かりやすい有機物ですね。
この有機物は、
太陽・水・土のエネルギーの塊です。
この有機物をエサ(エネルギー源)として微生物が繁殖します。
2.稲の地下部の残根
自然栽培米の稲の根っこを見ると
太根、細根ともに慣行栽培米の根っこより多いのが分かります。
肥料を使用していない自然栽培米では、
稲の根っこは養分を求めてどんどん根を伸ばします。
稲の収穫後、この残根が土壌微生物のエサとなります。
3.春先に田んぼに生える春草
自然栽培では、春草も大事な有機物の一つです。
その土にあった(その土を豊かにする)草が生えるので
なるべく生やして地上部と地下部に有機物を増やします。
4.土壌微生物の死骸
上記の写真では、堆肥となっていますが
自然栽培米水田においては
水田内の粉砕された稲わらや草・根っこ等の有機物と置き換えて下さい。
水田土壌内では、地上部、地下部ともに有機物が増えると
土壌微生物がドンドン増えていきます。
土壌微生物が土を作ってくれると同時に
彼らの死骸もまた貴重な有機物となります。
自然栽培の観点から見ると
「土壌微生物」の働きがキーポイントになっています。
私達が、農薬を使用しないのは
「土壌微生物」が死んでしまうためです。
自然栽培米水田の収量を見ると
慣行栽培米の約60%ほどとなっています。
土の主役は、物質的な養分ではなく、
命のある土壌微生物であることを意識して知恵を磨いていけば
これから収量は上がっていくと思っています。
生物の命を大事にする農業が
これからは大事になってきます!
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