根の働き・役割から自然栽培米を考える

更新日:2022年8月29日 公開日:2021年5月10日

植物の根

こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。

自然栽培に携わっていると目に見えないものを大事にする意識が芽生えてきます。

植物体でいうと地上部よりも地下部に価値を置くようになるのです。つまり、目に見える地上部がどんなに太っていても地下部の根が貧弱ならば力強い農産物をお届けすることは難しいと考えています。

今回は、普段目にすることが少ない根っこに焦点を当ててお伝えいたします。

まず、植物界で健全な植物の根っことは、どのように張っているのでしょうか?

地下部を見てみると、次のイラストのようになっています。

根のイラスト

出典 https://kotobank.jp/word/ひげ根-1581592

2種類の根っこの張り方がありますが、樹木や野菜等(双子葉類)は主根と側根を伸ばし、麦や稲(単子葉類)は、ひげ根を伸ばします。

稲の場合は、分けつといって、田植え後に一本の稲が根元から分かれて増えていきます。

稲の茎には、根ぎわにたくさんの節があり、この節から冠根(かんこん)を出すとともに一つの芽を出し、この芽が伸びていくのです。

根の量はいったいどれくらいあるのか

稲の根

「有機物を使いこなす」(農文協)の本の中で、播種後4ヵ月のライ麦の根の量を調べた結果がありました。

ライ麦はひげ根ですが、太く伸びる根とそこから派生する細い根があります。

本数を調査すると

太い根は143本
細い根は1300万本

長さ:623km 東京から大阪までより長い
表面積:237m2 タタミ144畳分

さらに細い根からは無数の根毛が出ておりその数は100億本以上

たった一株のライ麦でこれほどの根の世界が広がっているんですね。

根の働き・役割

樹木の根

根っこの役割としては

1)  地上部をしっかり支えるため土を掴む
2) 地上部へ養分・水分を送る
3) 地下部へ葉で作られた光合成産物を送る

根っこには、太い根と細い根があると言いましたが、太い根は、植物体を支えることが目的ですのでほとんど養水分を吸収する働きはありません。

細い根や根毛の先端から0.5-1.0㎝の間は根冠(こんかん)と呼ばれ根の成長点であり、呼吸と養分吸収をしています。ほとんど水分吸収はしていないようです。

葉の光合成で作れたでんぷんは根に送られ、そのでんぷんと土中の酸素を使い、呼吸により根は活動エネルギーを得ているんですね。

1.0㎝以上のその上の部分では、養水分の吸収が盛んに行われ、根毛の発生により、表面積を十数倍まで広げて効率的に養分吸収・水分吸収を行っています。

そのため細い根、根毛が非常に重要な役割を果たしているのですね。

根は養分を吸収するだけでなく与えている

稲の菌

あまり知られていないかもしれませんが、根の役割に、葉で作られた光合成産物を根の周りに分泌する役割があります。

根の分泌量がどのくらいかははっきりとしていないようですが、葉で作られた光合成物の10%以上が根から分泌されていると言われています。

つまり10a(一反)当たりに自然栽培米の収量300kgならば、30kg以上分の光合成産物を供給していることになるのです。

根の分泌物の中身は、炭水化物、アミノ酸、有機酸、酵素類などであり、この分泌物により根の周りの微生物と共生をしているのですね。

自然栽培米では、農薬はもちろんのこと、化成肥料・有機肥料も使用しません。

多くの方が、肥料無しでは作物は育たないと考えますが、私どもは下記のエネルギーで育つと考えています。

・火のエネルギー(太陽光のエネルギー)
・土のエネルギー(地球からくるエネルギー)
・水のエネルギー(水田に入ってくる水のエネルギー)

収穫時にコンバインの後ろから稲の収穫残渣が出てきます。

この稲の残渣は、まさに火・水・土のエネルギーが固形化したものですので、栄養分の補給と共にこのエネルギーを元に土壌微生物が繁殖するのです。

そして稲の生育中にも、葉で作られた光合成産物を根の外に分泌し、土壌微生物と共存して土壌から栄養分を得ています。

自然栽培米においては、土壌微生物との共生が大きなポイントとなりますが、根っこがその橋渡しをしているのです。

今日もお読みいただきありがとうございます!
自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田からお伝えさせて頂きました。

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