50cmの奇跡-稲の声を聞く|大柿長幸の自然栽培米
こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
2020年7月、熊本南部の人吉・球磨地域は球磨川の大氾濫により大規模な水害を被り、今なお復興途中にあります。
人吉市に住む自然栽培米農家、大柿さんの地区も水位4メートルの浸水被害に遭いました。
自然栽培米の稲は、田植え後一カ月が経とうとしていた頃でしたが、奇跡的に稲は流されずに生き残りました。
しかし、大氾濫の影響で500mにも及ぶ用水路に土砂が堆積し水路が断たれるという絶望的な状態になってしまいました。
誰もがお米作りを諦める場面で、「水が欲しい・・・」と稲の声を聞いたと感じた大柿さんは、シャベル片手に用水路に向かったと言います。大柿さんの自然栽培米はどうなったのか?お話を伺ってきました。
目次
大柿さんの住む熊本県人吉を襲った球磨川の大氾濫
2020年7月4日、熊本南部に降った豪雨により球磨川の水位は堤防を超えて大氾濫が起き、多くの家屋が浸水しました。
大柿さんの地区も水位4mの濁流が押し寄せ、家屋と田んぼは大きな被害を受けました。
大柿さんの無事の一報を頂いた私は、掃除の手伝いに伺いましたが、大柿さんの家に来る途中、周囲の被害状況を見て、「大柿さんの稲は全て流されてしまっただろう…」と思いました。
しかし、到着して私は自分の目を疑いました。なんとこの地区で大柿さんの稲だけが残っていたのです。
稲は生き残ったが水が来ない・・・
7月4日に水害を受けた大柿さんの田んぼは、奇跡的に稲は流されず生き残っていました。
しかし、大きな問題が残っていました。
用水路に土砂が溜まってしまい、田んぼに水が全く来ないのです。
8/15に出穂期(稲の穂が出揃う時期)を迎える稲は、通常ならば7/25から水をあげる必要があります。
大柿さんは、稲を見て「稲が水が欲しいと言っているのが分かった」と言います。
8/7頃、出穂まであと1週間ほどに迫っており、家の片付けの途中でしたが「体が勝手に動き、シャベルを持って用水路に向かった」と言います。
50cmでもいいから用水路の土砂を取る
出穂まであと1週間ほどというのに、水が全く来ない。
その理由は、500mほどある用水路全てに土砂が詰まっていたためです。
田んぼに水を流すには全ての土砂を取り除かなければなりません。それもシャベルで、手作業で取り除いていくのです。
通常ならば、もう無理で諦めるところです。出穂まで到底間に合いません。
大柿さんはシャベルを持って、用水路の土砂を取りに行きましたが、炎天下の中50cmほどを掘ったところで「これは大変過ぎる・・・」と用水路の横に座り込んだと言います。
しかしこの時、大柿さんが用水路の横で座っている姿を見た人が「何をしているのですか?」と話かけてくれて、手助けを申し出てくれました。
その輪が広がり、なんと2日で500mの用水路の土砂が全て取り除かれました。
大柿さんから当時の写真を頂きました↓
8月9日、出穂まであと1週間ほどを切った時
なんとかカラカラに干からびた田んぼに水が来ました。
当時の状況を自然栽培米農家の大柿さんに伺いました。
50cmの奇跡-稲の声を聞く
誰もがこの年の稲作を諦める中、稲の声に耳を傾けた大柿長幸さん。
自然と心を通じ合わせる大事さを教えて頂きました。
最後に:50cmの奇跡-稲の声を聞く
大柿さんは、今でもこの2020年に収穫された稲穂を大事に保管されております。
この稲穂は、大柿さんにとって、対話した稲であり、一緒に生き抜いた稲であり、多くの手助けがあって収穫できた稲であり、自然と心を通じ合わせることの大事さを教えてくれた稲であり、意味深い稲なのです。
私ははじめ、この話を伺った時は「諦めない心」がテーマかと思いましたが、話をよく聞くとそうではなく、稲の声を聞いて勝手に体が動いたことが真のテーマであることに氣付きました。
常日頃から自然と心を通じ合わせることを意識していたからこそ大柿さんの稲は生き残ったのだと思います。
心の声に従って、自分の感覚を大事にして動くことの大事さを学んだような気がしました。
この世は奥深いですね。
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